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ネタバレあり:『サガエメ』はシリーズ初心者でも面白い。頭脳戦の極みともいえるバトルや想像の余地だらけの物語などRPGとして濃密な仕上がりに【サガ エメラルド ビヨンド】

文:電撃オンライン

公開日時:

 4月25日の発売日がいよいよ迫って来た、スクウェア・エニックスのRPG『サガ エメラルド ビヨンド』。その先行プレイレビューをお届けします。

 この記事を執筆するわたくしゲームライターのタダツグは、恥ずかしながら『サガ』シリーズほぼ初心者(過去作は少しだけ触れたことがある程度)。そんなビギナーの目に『サガエメ』はどう映るのか? 遊んでみて感じた印象を正直に書き記していこうと思います。

 もちろん物語の核心に迫るネタバレには触れないよう考慮していますが、気になる方はご注意ください。

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こんなRPGは遊んだことがない! シリーズ特有の味付けの濃さを初体験


 これまでずっと『サガ』シリーズからは距離を置いたゲーマー人生を歩んできました。正直なところ、ゲームボーイ版やSFCの『ロマンシング サ・ガ』をちょっと擦ったことこそあれど、どっぷりノメり込むことはなく。今回記事を依頼されたことをきっかけに、本格的に『サガ』デビューをはたすことになりました。

 ひと言で言えば、このゲームは“沼”ですね……。ちょっと遊んだくらいではまったく底が見えない! いったいどれくらい深いのか、まるで見えてこないんですよ。個人的には“こんなRPGが存在していたなんて!”と軽く衝撃を受けました。よくも悪くも味付けが濃すぎる。これが『サガ』かッ! 『サガ』なのかッ!?

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 思えば、かなり長いこと『サガ』を遊んでみてほしいと色々な人から勧誘されてきました。おそらくハマる。きっと琴線に触れる。たぶん性癖に刺さる。「むしろ『サガ』を遊んでいないのにRPGファンを名乗るな」と、酒の席で酔いに任せた説教をされたこともあるほどです(笑)。

 毎度気になっていたのは、みんながみんな“たぶん”や“きっと”といった曖昧な言葉を使ってくること。ハマればどこまでも深い、しかしそれゆえに遊ぶプレイヤーを選ぶ。そんな沼みたいなゲームだと暗に伝えてくるんですよね。そして、みんなの言葉の真意をこの『サガエメ』で存分に思い知った、と。そういうお話でございます。沼です、沼。

 この記事では物語やキャラクターに抱いた印象に加え、とくに僕が気に入った物語の自由度の高さと、戦略性の高いバトルの2軸について書きしたためていきたいと思います。

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物語:“エメラルドヴィジョン”に彩られた自由度の高いストーリーがプレイヤーの想像を掻き立てる


 ここで告白しておきますと、今回、自分は『サガエメ』を15時間ほどしか遊べておらず、そういう意味ではファーストインプレッションに近いです。できれば全主人公の物語を1度はクリアしたうえでレビューしたかったので、個人的にも不本意ではあるのですが(マジで4月は忙しかったんだと言い訳しつつ)。とはいえすでにこの時点で、本作の沼っぷり、そして異色さ加減にはとっくに気づいております。

「こんなゲームが令和の時代に遊べるとは!」

 これが嘘偽りなき正直な感想ですね。なんなら、この言葉でこのレビューをシメてもいいくらい(いや、さすがにマズいか 苦笑)。

 ということで、まずは物語や世界観について触れていきましょう。事前情報では、多様な種族が生きる17の世界を翠の波動“エメラルドヴィジョン”に導かれた“6人5組”の主人公が冒険していくとアナウンスされていましたが、これは本当に言葉どおりでした。

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 僕は御堂 綱紀(みどう つなのり)編とアメイヤ アシュリン編をクリアしていますが、自分としては各主人公同士の物語が点として描かれ、それが繋ぎ合わされて線になっていくのかな……と思っていたんですよ。そういうRPGは過去、いくつも遊んできていますから。

 ……ただ、今のところ『サガエメ』にそんな雰囲気はなさそうです。もしかすると他の主人公たちの物語では違った展開があるのかもしれませんので、断言はできませんけどね。本作では基本的に、各主人公ごとにパートナーとなるメンバーが存在し、彼ら彼女ら(主人公によってはクグツやロボ、モンスターも参戦)と一緒にさまざまな世界をめぐっていく物語が描かれていきます。

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 各主人公ごとにお話のノリは異なるものの、基本的にポジティブなキャラが多く、読みごたえとしては比較的ライト寄り。ここらへん、ハイファンタジーを想像していた自分としては意表を突かれた部分はあります。ダークではあるんですよ。でも、受ける印象はライト寄りと、なんだか絶妙なさじ加減なんですよね。たぶんこれが『サガ』なんだろうなあ。

 世界観の説明を含め、ちょっと突き放した感があるんですよね、このゲーム。すべてを語るわけではなく、プレイヤーに想像の余地を残してくれている作品です。

 “その手のゲーム”は今ドキさしてめずらしくはないかもですが、本作においては尖り方がかなり明確。物語に限らず、登場人物や世界観、はてはバトルインフォメーションにおいても、すべてがどこかフワッとした説明で進んで行きます。僕は許容範囲なのですが、人によっては「もっと説明してくれてもいいのよ!」とか「もうちょい掘り下げてほしい!」なんて思うかもしれませんね。ここらへん、賛否両論に分かれる可能性もありそうです。

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 個人的には“往年のRPGっぽい”のひと言で解決されちゃう気もしますけどね。昨今のゲームは物語に限らず、さまざまな要素をしっかり紹介してくれるので、その丁寧さに慣れてしまいましたが。昔のゲームって奔放というか放任主義というか、たいした説明なんてされることもなく冒険に放り出されることも多かったんですよ。この『サガエメ』は完全にそっち寄り。むしろ、まだ説明してくれている方かもしれません。

 もちろん今は令和の時代ということで、感じ方は色々ありそうですが。僕としては久しぶりに懐かしいチューニングの作品を遊べているなというワクワク感がありました。めちゃくちゃ手探りで進めていくこの感覚は、一周回って新鮮だとさえ言えるでしょう。今のゲーマーたちの目に本作のチューニングがどう映るか楽しみですし、願わくば受け入れられるといいなと思ってます。

 ゲームの説明に戻りましょう。17ある世界はそれぞれが独立していて、世界観や雰囲気が大いに異なるのがポイント。それぞれの世界に到着したら“スキャン”を行うことで、イベントスポットが“ヴィジョン”として展開し、プレイヤーは各ヴィジョンを訪れることでさまざまな選択を迫られます。選んだ内容によって物語は多彩な変化を見せてくれるのが特徴です。

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 ヴィジョンごとに突き付けられる問題があり、考えさせられる内容。選択肢の重みはかなりものです。次に進むべきヴィジョンは見えているのの、選択肢としてどちらを選べばいいのかがわからない。本作で悩むのは“次への進み方”ではなく“自分が何を選ぶのか”という部分なんですよね。ある意味割り切った方向性……これこそが『サガ』なのか? 思わず魅入られてしまいます。

 冒険の舞台となる世界も多様。現代日本のような世界“ミヤコ市”。魔女たちが暮らすファンタジーに満ち満ちた世界“プールクーラ”。闇が世界を覆っている“ヨミ”。どこかの誰かの体内だよね? としか思えない“コスモス”などなど、いずれの世界も訪れた際に受ける印象はガラリと変化します。

 個人的には、御堂編で訪れたコスモスでの物語が超印象に残っていて。こちらは人間の体内でウィルスや悪性腫瘍の脅威に立ち向かう白血球や、血液に乗せて彼らを体内に循環させる赤血球たちを神官や運び屋に見立て、RPGライクに仕上げた物語が展開していきます。

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 体内で勢いを増していく異物(つまりは悪性腫瘍)に飲み込まれ、仲間であるはずの神官(白血球)たちが次々と敵対していくところとか、妙に生々しいというか、なんというか。よくもまあこんな題材を思いつき、RPGに落とし込んだものだと感心しきりでした。

 もしかしたらこのコスモスでの物語みたいに、ゲームでわかりやすく人体の仕組みやら何やらを教えたほうが、効率的に理解できる小学生とかもいるのではなかろうか。教育への価値観が少し変わった瞬間でした。

 さておき、物語は様々な局面で選択肢が出現し、プレイヤーがどれを選ぶかで複雑に変化していくのは前述したとおりです。軽い気持ちで選んだ選択で、敵対している勢力のひとつが簡単に壊滅してしまったりもして、めちゃくちゃビックリする局面もありました。

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 だって、普通のゲームなら2大勢力のどちらかが滅ぶときって、なんらかのボス戦とかあるじゃないですか。主人公たちが強敵と相対し、これを倒すことで戦局が動く……みたいなノリ。でも、この『サガエメ』では物語の要所とはいえ必ずしも劇的なことが起こるわけではないんです。結構あっさりと進んで行くことも多く、それがかえってこちらのハートを揺さぶってきます。「えっ、たったこれだけの選択で世界が動くの?」とビックリさせられるんですよね。転がり始めた石がどこに向かい、何を巻き込んで大きくなるのか最後まで分からない。そこが本作の面白い部分です。

 まだ2人の主人公の物語しかクリアしていませんが、いずれの終わり方もかなり中途半端なところもミソ。たぶん、周回プレイでどんどん結末が変化していく予感がぷんぷんします。……僕のプレイが相当お粗末な可能性もありますけどね。八方美人に徹するのか、長いものに巻かれるのか。それとも、己の信念に基づいて初志貫徹するのかなど、選択を突き付けられるたびに何かを試されている気分になってくるから不思議です。こんなの、まんま人生と一緒。そうか、『サガエメ』は人生なのか……。ちょっと達観してしまいそうです。

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 1回のプレイですべてを味わえるRPGも好きですが、本作は周回プレイ前提の構成になっている(と思われる)ので、それがまた沼の深さに直結するんですよね。まさに沼としか言えないでしょ、こんなの!

 自分にとって最良の結末に辿り着くにはどうすればいいのか。試行錯誤しながらプレイしていく日々は続きそうです。

バトル:1戦1戦が緊張感バツグン! “連携”を狙うタイムラインバトルがアツい


 試行錯誤と言えば、バトルシーンの戦略性の高さもまさにそう。本作のバトルは一戦一戦が普通のRPGでいうイベントバトル的な扱いとでもいうか……濃密さや手ごたえが全然違うんですよ。僕は個人的に大好きですね、このバトルシステム。

 本作ならではの要素が盛り込まれまくりな戦闘システムについて、簡単に説明しますと。バトルに突入したら“タイムライン”に沿って、味方や敵の行動順が決定していきます。

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▲戦闘中の画面。下に表示されているのがタイムラインで、各キャラの行動順や連携範囲が表示されています。

 タイムライン上で味方の行動をうまく接続できれば“連携”が発生。これによって攻撃の威力が上がるほか、“オーバードライブ”と呼ばれる再行動の追撃が発生したりするので、積極的に狙っていくべき要素。オーバードライブは連携150%以上で発動するようになるので、まずはそこが目標になってきます。

 連携に際して重要となるのが、技や術に設定されている“連携範囲”。繰り出す技によって連携範囲の広さが異なり、場合によっては行動順にも影響を及ぼすことがあるので、綿密に計算しながら各キャラの行動を選ぶ必要があります。そしてその試行錯誤がとても楽しい。

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▲連携範囲を写真で説明しましょう。ボウの“精密射撃”はタイムライン上の移動はなく、連携範囲は1マスですが……。


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▲“地上掃射”を選べば、連携範囲は3マスに。そのぶんのタメが必要なのか、タイムラインは少し後ろに移動していますね。実戦ではこれを計算して、他のキャラの行動を考えていくことに。

 連携は当然ながら敵も使ってくるので要注意。つまるところ“いかに味方の行動を連携させつつ敵の連携を断つか”がバトルシステムのキモとなります。やっていることというか、狙いどころ自体はとてもシンプルと言えるでしょう。

 では、バトルが簡単かというと答えは“NO”。シンプルながら戦略性はとても奥深いです。その要因はいくつもあるのですが、ここでは端的にわかりやすい“リザーブ技”で説明していきますね。

 リザーブ技は、ひと言で言えば“条件を満たしたときに発動する技”です。敵の特定の攻撃属性に反応して先制攻撃を仕掛ける“インタラプト”や、敵の攻撃から味方をかばう“プロテクト”、相手の攻撃を無効化しつつ高威力の技で反撃する“カウンター”など、多彩な種類があります。これらをうまく使いこなすことで連携をつなぎ、敵の連携を阻止することで戦況は有利にも不利にもなるわけですね。

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▲リザーブ技は“技・術”の項目で事前に確認しておくことをオススメしておきます。


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▲味方の行動に反応して追撃する“フォロー”のリザーブ技が発動。これにより、本来は繋がらなかった連携が実現したりします。……逆に途切れてしまうこともあるのですが(汗)。

 まあ、正直テキストで読んでもイマイチわかりづらいかもしれませんね……。ここらへんはプレイすれば少しずつ感覚的に理解できていくところなのでご安心を。

 ちなみに、このタイムライン上での攻防は、前作『サガ スカーレット グレイス』から連なる要素とのこと。僕はカードバトルを遊んでいるような印象を受けました。リザーブ技は罠カード的な位置づけで、ハマればすごく気持ちいいこともあり、ついつい狙いすぎてしまいます。ここらへん、遊び手の性格が出そう(笑)。

 なお、敵の行動の一部はタイムライン上に表示されていたりするので(なかには“???”となっていて見えないものもあり)、ちょっとプレイヤー優位な感じ。うまく連携に割り込みつつ立ち回りやすい仕様と言えるでしょう。

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 ユニットやタイムライン上で孤立している(=味方や敵が傍にいない)ときは“独壇場”と呼ばれるイカツい状態になり、BP(行動ポイント)を消費してガンガン連続攻撃を決められるように。連携とは逆の発想となるこの独壇場の存在も、バトルの結果を左右する重要な要素といえます。

 独壇場は当然ながら、味方や敵の数が減ってタイムラインがスッキリしやすい戦闘終盤に起こりやすいです。終盤になるほどBPが増えていることも多く、場合によってはガチで形勢逆転につながる可能性も。99%負けたと思っていた勝負を、独壇場でひっくり返したときのうれしさはハンパじゃないです。もちろん、その逆もしかりですけどね。

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▲味方が独壇場を発動したときの頼もしさも、敵が独壇場を発動した時の絶望感もハンパじゃないんです。よくできたシステムだ(笑)。

 僕でも知ってる『サガ』シリーズ特有の“ひらめき”システムは本作でも健在。ひらめいた瞬間に技を繰り出してくれるので、思わぬ追撃で有利になったり、逆に想定外の行動で不利になったりもします。ここらへんの“計算外”が起こるところも、本作の醍醐味といえるでしょう。

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 もちろん、『サガエメ』はしっかりRPGということで。バトルを繰り返してキャラのステータスを上げたり、武器を強化したりといった育成要素も重要。成すべきことをしっかり成すことで勝利に近づく、やり込み派プレイヤーも納得のバトルバランスに仕上がっていると思います。

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▲バトルの後半、長い連携範囲を繋げていき、満を持してオーバードライブが発動した時の気持ちよさたるや!

 ということでやや駆け足気味ではありますが、物語とバトルという2つの側面から、シリーズ初心者視点で本作の魅力を語らせてもらいました。キャラ育成も奥深いですし、自分としては少なくとも全キャラの物語をクリアするところまでは遊びたいなと思わせるクオリティです。なんなら全キャラのトゥルーエンドというか、自分的に納得ができるエンディングも見てみたいまである。

 ビジュアルは好みもあると思いつつ、物語を盛り上げるムービーなんかは一切ないので地味なのは確か。前述のとおりやや説明が少ない部分もあるなど、ストーリーも個性が強めな作品です。味付けは他に類を見ないほど濃い目と言えるでしょう。だが、それがいい! 自分みたいなシリーズ初心者もしっかりバッチリ楽しめているわけで、本作から『サガ』デビューするのも全然アリだと思えます。

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▲アイテムトレードでの一幕。熱帯雨林が武器を売ってるとか(笑)。こういう小ネタが多数仕込まれてるのも面白い。

 正直に言えば、好きな人はものすごくドハマりする魅力がありつつ、この味付けの濃さが苦手な人も一定数いることは間違いないでしょう。どんなゲームにもそれは言えることですが、本作においては“0か100か”レベルに極端かもしれません。誰にでもオススメできる作品とは言いづらいですが、秘めたる魅力があることも確か。せっかく体験版が配信されているので、気になる方はまずそちらを遊んでみて手触りを確かめてみるのはいかがでしょう。体験版の時点で、良くも悪くも「なんじゃこりゃ!」な体験を味わえますので、ぜひぜひに。

 そのうえで、「こりゃ面白い!」と気に入ったらぜひ最後まで遊んでみてほしいと思います。僕も引き続き、この新しい『サガ』の世界にどっぷりと浸ろうと思いつつ……。それでは、今回はこのへんで!

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