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【関羽と張遼】因縁の三国志人物たち(運命の二人)①【三国志 英傑群像出張版#28-1】

文:電撃オンライン

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 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。

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三国志 英傑群像出張版を読む

 4月になりました。新年度ということで、この英傑群像出張コラムも2年以上続けさせて頂きお読みいただきありがとうございます。

 今までご紹介を続けている【三国志民間伝承】はそのままに、追加で別の三国志コラムも別枠で実施しようかと思います。

 以前【孫権と張昭の逸話(リンク)】のまとめを書いたのが楽しかったので、【因縁の三国志人物(運命の二人)】というテーマで武将二名をピックアップして三国志演義(物語)、正史三国志(歴史書)、民間伝承などから紹介してみるという新しい試みにチャレンジしてみたいと思います。

 最初は【関羽と張遼(ちょうりょう)】にしました。

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 なぜこの二人を選んだかというと『横山光輝三国志』は非常によくできた漫画ですが、三国志演義にある張遼と関羽の友情話がカットされているからです。二人の友情からそれぞれ別の主君に降伏する伏線などがある気がしましたので、今回彼らを選んでみました。

 関羽は皆さんご存じの通りで、張遼も有名ですのでもちろんご存じかもしれませんが、まずは張遼とはどんな人物だったのか簡単に解説してみると下記になります。

●丁原・董卓・呂布に仕え、その後、曹操に仕える
●合肥で孫権を何度も撃退し、魏の筆頭武将となった
●「遼来遼来(張遼が来るぞ)」というと泣く子も黙るという言葉の由来にもなった

 さて、それぞれの物語をみていきましょう。

因縁の三国志人物たち【関羽と張遼】



三国志演義での活躍


 まずは、三国志演義全120回(全120話)でのそれぞれの活躍をピックアップしていきましょう。

 【張遼】は第11回に呂布の武将として登場し、第86回で丁奉の矢を受けて命を落とすまで何度か登場します。

 一方の、物語の主役級である【関羽】は、もちろん第1回目から登場しまずが第77回で呂蒙に捕まり処刑されてしまうので、張遼の方が後まで活躍したわけです。

民間伝承の逸話


 そしていま私が民間伝承で確認している張遼の逸話は下記のようになります。

  • 関羽を降伏するように説得する三つの約束の話
  • 関羽が劉備の元へ戻る関羽千里行で関羽と夏侯惇が戦うのを制止する話

 この2つ以外、ほとんど主役的に登場するモノが見つかりません。これらは三国志演義にあるものとほぼ同じ内容です。

三国志平話


 三国志演義の原点でもある三国志平話では、以下のように活躍をみせていますね。

  • 関羽を降伏するように説得する三つの約束の話(三国志演義の原型のようなお話が登場)
  • 関羽千里行で関羽が曹操の贈り物を貰う為に馬を降りたら捕まえる作戦を張遼が立てるも関羽は下りず。


正史三国志


 お次は正史三国志になります。こちらはいくつか異なる部分があるので見ていきましょう。

  • 三国志演義と一番異なる部分は病死する所(演義で魏の武将は大半戦死させられる運命です)
  • 曹操の元に降伏してた関羽に曹操は張遼を派遣し曹操に仕える気がないか質問させ、「劉備を裏切ることは無く、曹操への恩返しが済んだら立ち去る」と言ったという、三国志演義と同じ内容が書かれています

 さらに正史の注釈には、張遼が「関羽は兄弟(的関係)」と言ったと書かれています。正史の記述を見るに、おそらく一回りほど関羽が年上ぽいので、扱いとしては張遼が弟分になるかと思われます。

三国志演義の伏線と二人の友情まとめ(英傑群像調べ)


 三国志演義より、二人の出会いから、戦いの歴史など絡みのあった場面を抜粋していきます。

  • 第16回:二人の初対面。呂布から曹操の元へ逃げる劉備一向。関羽が追手の張遼を防ぎます
  • 第18回:またも二人は戦うことに! 関羽が張遼に忠義心を感じ「なぜ逆賊(呂布)に味方する?」と言うと張遼は恥じ入り撤退
  • 第18回:下邳で呂布が袁術に援軍を呼びに行く際、二人は戦になりかけるも張遼は城に撤退
  • 第19回:劉備を呂布が急襲すると、張遼は関羽の陣営を攻め勝利します
  • 第20回:呂布と共に張遼は捕まる。劉備・関羽が張遼を許すように進言し張遼は曹操配下となります
  • 第25回:下邳で関羽が曹操に追い詰められて降伏勧告の使者として張遼が登場。張遼は関羽に助けてもらった恩を返す為に使者となり、関羽の【3つの罪】を指摘する。それに対して関羽は【3つの条件】を出して曹操に降りました
  • 第26回:張遼が袁紹配下の文醜に重傷を負わされると関羽が登場して文醜を斬ります
  • 第32回:劉備の居場所をしった関羽の気持ちを聞くため、張遼が遣わされて会談。関羽は帰る決意であると張遼は曹操に報告しました
  • 第33回:関羽が劉備の元へ向かうと張遼は使者として夏侯惇を制止し関羽の脱出を助けます
  • 第50回:赤壁の戦いで負けた曹操は張遼を伴い華容道を逃げます。関羽に捕まるも曹操は過去の恩義に報いて彼らを見逃します


まとめ


 やはりこうやってみると、正史三国志にあった二人の友情と、三国志平話の張遼の説得話をうまく結合して、三国志演義では【お互いがいないと生き延びてなかった運命の相手】に仕上がっているように思います。

 ちなみに徐晃も関羽と仲が良かったですが、樊城の戦いで関羽を倒す重要な役割を担うことになります。敵同士の友情とかが描かれるって三国志はやはり深いですね。

 次回は関羽・張遼の二人とも繋がりの深い【呂布の民間伝承】をご紹介します! お楽しみに。

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春の三国志会2024のご報告


 今年も無事に春の三国志会を終えることができました。ご来場の皆様、ありがとうございました。

 春の三国志会はひとまずの区切りとなりますが、いつかまた開催したいと思っております。

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 なお、本コラムで未公開の関羽の民間伝承が掲載されているパネル展ですが、7月末位までは展示しておくつもりですので、KOBE鉄人三国志ギャラリーのお近くに来られた際は、ぜひお立ち寄りくださいね!

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岡本伸也英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!



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